有機の里として知られる丹波市市島町。丹波たかみ農場は、その中でも高い技術力と美しい圃場管理で、農業者仲間からも一目置かれています。農業大学校卒業後、丹波たかみ農場に就職して4年目(2022年10月現在)になる小林夢芽さん。真摯に農業と向き合う姿勢と明るい笑顔が周りを元気にしてくれるおひさまのような存在です。ここでは、農家として着実に成長を重ねてきた夢芽さんと、その歩みを見守ってきた丹波高見農場の代表・高見康彦さんにお話を伺いました。
 

(左・高見康彦さん 右・小林夢芽さん)


 
 

農家を志し農業大学校へ、有機農業との出会い

小学生の頃から野菜を育てることに興味を持ち、農家を志してきたという夢芽さん。生まれも育ちも兵庫県尼崎市、農家の知り合いは周りにはいませんでした。「農家になるにはどうしたらいいの?」高校時代の進路指導で相談したところ、農業大学校を進められ、進学。

農業大学校の学びはとても実践的だったと夢芽さんは話します。全員当たり前のように大型特殊免許を取得、合格した人から実地で乗ることもできます。
 

(2トントラックも乗りこなします)


味の始まりを作る農業。夢芽さんにとって農業大学校で栽培を学ぶことは楽しいことの連続でした。カリキュラムの大半は慣行農業でしたが、授業の中で触れられた有機農業の存在には衝撃を受けたといいます。「これまで習ってきたことと全然違う。これで本当に野菜ができるの?」夢芽さんは俄然有機農業に興味を持ちました。その時思い出したのが、親御さんが病気で味覚障害になり、好きだった食べ物を食べられずにショックを受けていた姿でした。病気の人でも安心して食べられて、味の深い有機野菜を作りたい。卒業後の進路に「有機農業をしている農業法人」というビジョンが見えてきました。
 

(美しく整えられた倉庫)


就職先を探すに当たり、「丹波市の市島町が有機の里だよ」と農業大学校の先生から伝え聞き、丹波市役所に問い合わせました。「市島町の丹波たかみ農場さんが、お話を聞いてくれるそうです」そう返答を聞き、「お話だけかな」と職場見学の気持ちで夢芽さんは初めて丹波市を訪れました。普通免許も大型特殊免許も取得していましたが、そのときはどちらもペーパードライバー。市島駅まで車で迎えに来てもらったのも良い思い出です。
 
 
 

丹波たかみ農場で農業スタート、戸惑いながらも奮闘

その頃の丹波たかみ農場と言えば、ちょうど法人化したばかりでした。長らく家族経営で作物づくりに励んでいましたが、近くの休耕田などを任されることも増え、作付面積は増える一方。「人が足りない。若い人に来てほしい」と願っていた康彦さんにとって、夢芽さんの来訪は願ったり叶ったりでした。その場で話がまとまり、夢芽さんは農業大学校卒業後、丹波高見農場に就職することになりました。
 

ドキドキの就農一年目。トラクターの運転に苦戦し、最初は手取り足取り。「高見さん(康彦さん)と、おじいちゃん(康彦さんのお父さん)に代わる代わる見守られながらこわごわ乗っていました」。2年目からは少し遠くで見守ってくれるようになり、4年目となった今は任せてもらえることも増えてきたのだそう。
 

(丹波黒枝豆用のコンバインに乗って)


「農業大学校でしっかり学んできたからなのか、飲み込みがとても早かった。免許を持っていたので、最初から大きなトラクターに乗ってもらうことができたのもよかった」と、康彦さんははじめから夢芽さんに好印象。夢芽さんは、「高見さんとおじいちゃん、二人の教え方が違うように聞こえて、始め戸惑ったこともあったけど、だんだんわかってきて、2つのやり方を臨機応変に選べるようになったのは結果的に良かったと思います」と笑顔を見せます。「それに、周りの方も気にかけてくれていて、トラクターではまって動けなくなったら『どうしたんや』と声をかけてくれて助けてくれるなど、とてもありがたかったです」夢芽さんの明るいキャラクターが周りに人を集め、高見さんをはじめとする多くの先輩農業者から多くの学びを得ることに繋がりました。
 

(作業について指導を受ける夢芽さん)


さらに、丹波市の青年農業者の農業グループ「大空の会」にも、康彦さんの代替わりとして参入。「一気に横のつながりが増えました。年上の人も多いので、お父さんが増えたような感じ」。移住したばかりの丹波市に、夢芽さんは着実に根付き、すくすく育っているようです。
 
 
 

これからのライフステージと農業について

(中央・加藤克佳さん)


2022年4月、丹波たかみ農場にまた若手農業者が就職しました。頼れる新人・加藤克佳さんは夢芽さんの農業大学校の同級生でした。「また新しく人が来ないかな」と康彦さんが言っているのを聞き、ふと加藤さんのことを思い出した夢芽さん。連絡を取るとちょうど前職を辞め仕事を探しているということで、こちらもトントン拍子で話がまとまりました。夢芽さんと康彦さんが一緒に運営しているInstagramも見て、就職後のイメージは付きやすかったと加藤さんは話します。
 
丹波高見農場では従業員を迎えるにあたり、家族経営の頃とは違い、従業員同士でコミュニケーションをとったり休憩をしたりできるようなスペースが必要だと設備も整えました。このスペースで昼ごはんをみんなで囲む時間は夢芽さんのお気に入りの時間で、加藤さんが来たことで更に楽しくなったと話します。そんな夢芽さんにこれからの展望を聞くと、「これから結婚して、子どもが生まれても丹波市で暮らしていきたいし、育児をしながらまたここで働きたいな」との言葉。夢芽さんにとって丹波たかみ農場というフィールドは、人生に希望の種をまく大きな圃場となっているようです。
 

 
 
 

株式会社 丹波たかみ農場

所在地:兵庫県丹波市市島町与戸1076
TEL/FAX:0795-85-1912
https://www.instagram.com/takamifarm/