丹波市青垣町大名草のことぶき農園。ここでは、2020年に就農し、2023年現在まだ20代半ばという若さの農業男子・足立竜真さんが農場長を務めています。足立さんは青垣町生まれの青垣町育ち。高校卒業後、周りの友人の多くが地元に残る中、足立さんは地元を離れ京都の大学に進学しました。一度離れることで、自分がどれだけ地元を好きだったかということに気づき、勉学の合間に帰郷、特に農繁期にはご両親の農業の手伝いに勤しんできました。ご両親はぶどう園を営み、秋には丹波黒枝豆の収穫販売なども行っていました。主に収穫や販売などを手伝ううち、お客様に美味しいものを手渡し、喜んでいただけるという経験に喜びを感じるようになり、卒業後の進路として就農を志すようになりました。
 

 
 
 

大学在学中にいちご農家で研修、卒業後就農へ

就農したいと家族に話したところ、「ぶどう園は秋にしか収入がない。冬に収穫できるイチゴを始めてはどうか」とアドバイスを受けた足立さん。大学在学中に学業と並行し、イチゴ農家で1年半に渡る研修を受けました。地元青垣町にもイチゴ狩りのスポットを作りたいと、イチゴの栽培について足立さんは熱心に学びました。
 

2020年、大学卒業と同時に就農。お祖父さんが使っていた農地にビニールハウスを建て、イチゴ栽培に挑戦します。一般的にビニールハウスと言えば、屋根が丸いアーチ型のものが主流ですが、青垣町は丹波市では唯一の豪雪地帯。アーチ型のビニールハウスの連棟は、雪の多い冬期に収穫するイチゴには不向きです。ことぶき農園でも、鉄骨がしっかり入った三角屋根型のビニールハウスを設置しています。また、イチゴの栽培と品質を管理するのに大切なのが「温度」。夜間温度を適切に保つことで糖度の高いイチゴが育ちます。温度が低すぎるのはもちろん、高すぎても美味しいイチゴは育ちません。ハウス内には温度を一定に保つ暖房機を使用するほか、温水で土の部分だけを温めるなど、イチゴにとって適切な温度管理になるための設備を取り揃えています。
 

(パイプから温水を汲み上げている)


 
 

自分の農地と向き合うということ

同じ丹波市内でイチゴを育てると言っても、研修先の氷上町と青垣町では気温も水も違います。水質はどちらも良いのですが、青垣町の水は、イチゴを栽培するにはミネラル分が多すぎることも判明。研修先で学んだように栽培した1年目は、イチゴがほとんど収穫できなかったといいます。設備もしっかり整えて臨んだ最初のイチゴ栽培がうまくいかず、戸惑う日々でしたが、その経験を通して自分の農地の性質を知り、この農地で栽培できる品種もわかってきました。2年目はあえて肩の力を抜き、まっさらな気持ちでイチゴと向き合ったところ、品質の高いイチゴが鈴なりに。一度はイチゴ栽培を諦めないといけないのかと悩んだ足立さんも、現在は改めてイチゴ栽培に意欲を燃やしています。気温が低い青垣町では、イチゴがたくさん取れるわけではありません。その分、一つ一つの味が濃く甘くなり、食べごたえもたっぷり。お客様に満足してもらえるイチゴが作れるようになりました。
 


 
1年目の自分を振り返り、イチゴ栽培がうまく行かなくてもなんとか乗り切れたのは、両親が営んできたぶどう園があったことが大きかったと足立さんは話します。足立さんのように、お祖父さんの農地があり、ご両親がぶどう園を経営してきた地盤があっても、新しく農業をはじめて設備を投資し、農地の性質をつかむのには時間も労力もお金もかかりました。イチから農地を探し、知り合いのいない場所で農業を始めるのには相当な覚悟が必要で、その状況に自分がどこまで対応できるのか、自分の限界を知ることも大切なことです。また、早くイチゴを育てたいという気持ちが先行したこともあり、就農の際に補助金を使わず見切り発車したのも反省点だとのこと。補助金の申請には時間もかかりますが、よく調べて準備しておくこともスムーズな就農のためには大切です。
 

 
 
 

一年中、美味しい旬のものと出会える場に

厳しい状況もありましたが、2年目からはイチゴでお客様の喜ぶ顔も見られるようになり、手応えも感じ始めるようになりました。丹波市内には野菜を育てている農家は多くありますが、イチゴの栽培をしている農家は少ないため、市外や京阪神の人はもちろん、市内の人もイチゴの直売やイチゴ狩りにたくさん訪れています。現在の大まかな年間スケジュールは、1月~5月がイチゴ、6月~7月がトマト、8月~9月がぶどう(9月からは新米も)、9~10月がさつまいもと黒枝豆。イチゴ狩り・摘み取りのほか、さつまいもと黒枝豆も収穫体験ができ、1年中丹波市の味覚を楽しめる場所として、季節ごとに何度もことぶき農園を訪れるお客様もいます。
 

取材時に栽培されていたのは、章姫あきひめ、恋みのり、かおり野、紅ほっぺ。これらのイチゴやぶどうは、基本的に殆ど出荷や卸はせず、直売や摘み取りを中心として販売されています。これは「ことぶき農園に直接足を運んでくださるお客様を大切にしたい」という足立さんの想いから。とれたての味をお届けしています。
 

(カフェスペース)



収穫物の直売だけでなく、併設のカフェではことぶき農園でとれた旬の素材を使ったスイーツメニューやドリンクも提供。カフェ提供のメリットは、廃棄する作物を大幅に減らせることです。薪ストーブのある店内は居心地よくリラックスでき、地元の方が少しホッとする空間としてもよく利用されています。

栽培状況やカフェメニュー、イチゴ狩りの予定や直売情報については、instagramを使い発信。農産物の直売はどうしても天気や収穫状況によって左右されやすいものですが、こまめな情報発信でお客様にリアルタイムで情報を届けることを大切にしています。

現在足立さんは梨園も増設中。ここに来てくれる人の笑顔のために、1年中いつ来ても美味しいものがある農園を目指し、土地と、作物と向き合う日々です。

 
 
 

ことぶき農園

所在地:兵庫県丹波市青垣町大名草903-2
TEL:070-2307-8881
定休日:水曜日+不定休
営業時間:10:00〜16:00ごろ
https://www.instagram.com/kotobukifarm5/