農業の未来をつくる「HOPE FARM」代表の小橋季敏さん。
2015年度より丹波市有機の里づくり推進協議会の会長を務められています。
昨年度、オーガニックビレッジ宣言を行った丹波市において、有機の里づくりを牽引されている小橋さんが、農業に対してどのような想いを持って取り組んできたか、地域の農業をどのように考えているか、これまでのお話をお聞きしました。
大阪で食料品店やスーパーに向けたチラシなど印刷物の営業マンとしてお仕事をされていた季敏さん。
地元の丹波市春日町で専業農家を営んでいた父親が体を壊し、家業を手伝って欲しいと頼まれます。
そうして34歳の時に奥さまの晃代さんと故郷の丹波に戻り、農業に従事することを決意します。今から20年ほど前のことでした。
丹波市の有機農業の先駆けとなった「有機の里いちじま」
丹波市における有機農業の歴史は1970年代に「市島有機農業研究会(略称:市有研)」が発足したことに起因します。
季敏さんの父親もよく市有研の勉強会に参加し、市島地域を中心とした有機農業の取り組みや農家さんたちとの繋がりを大切にされていたそうです。
その市島地域の先駆的な流れから、神戸や西宮など消費者団体からの要請を受け、氷上低温殺菌牛乳を中心とした「氷上パスミルク生産会」の発足に繋がります。
当時、氷上郡の生産者たちと神戸や西宮など都市部で暮らす消費者団体が直接つながりを持ち、それぞれの農家ごとに班をつくり、安心安全な牛乳や有機で栽培されたお米やお野菜をお届けするという形が確立しました。
生産会の発足から40年以上経った今現在も尚、農家さんたちの多くがその繋がりから直販を続けています。
小橋家でも、季敏さんが子供の頃には酪農を行なっており、多い時には15頭ほどの乳牛がいたそうです。
小橋班の消費者グループとのお取引きは、季敏さんが大阪から丹波に戻り、父親の手伝いを始めてからも続けられ、現在でも継続して配達を行っています。
新しい挑戦から生まれる農の可能性
丹波に戻り、日々の農業に真面目にコツコツ取り組むと同時に、新しい仕掛けもたくさん生み出してきたHOPEFARM。
収穫体験を自動販売機で売る「はたけスーパー」では、収穫用の道具や袋を自動販売機に入れて畑で自由に収穫ができると都会からの農業体験に大人気。
畑に24時間定点カメラを置いて、畑のLIVE映像を届ける「畑TV」では、虫や蛙が時々映る様子が都会の消費者さんに喜ばれました。
数多くのメディアにも取り上げられながら、消費者さんたちに田舎の体験をお届けしてきました。
新規就農を目指す研修生の受け入れも数件行いました。
1年間の研修生や3年間の研修生を受け入れてみて、改めて人を雇用する難しさを感じた季敏さんは、機械の導入を積極的に行うようになりました。
マメモーグやアイガモロボなどのテクノロジーをいち早く取り入れ、昨年度は井関農機との実証実験も行いました。
新しい機械が出るとつい導入してしまう季敏さんは、「あと1〜2年待てばもっと性能がいいのが出ることも多いんやけどな」と笑います。
生前の父親の影響もあり、季敏さん自身も市島や丹波市での農業者の集まりに積極的に参加してきました。
そうして農業について熱心に勉強をしていると、色々な役が降りてきます。
「役を受けると全体の流れが把握できる」と話す季敏さんは、お声がけいただいた役職はなるべく引き受けるようにしています。
そうしている内に、また色々な繋がりが広がり、取引先も増えていきます。
前職での繋がりから小売店などの取引先も増え、父親の頃に2haあった耕作面積は、いつの間にか4〜5倍になりました。
有機栽培の小麦を探していた姫路の製麺会社からの依頼で、5年ほど前から野菜の生産を減らし、小麦の生産を始めます。
最初の2年は小麦として納入していましたが、更にその製麺会社から強い要望を受けて、製粉機を導入し、小麦粉での納入を始めます。
そうして、大阪のパン屋さんに小麦粉を販売したり、HOPE FARMオリジナルの乾麺「細うどん」も販売するようになりました。
現在は有機栽培のお米を3ha、有機栽培の豆や麦を3haほど栽培されています。
農の学校では、主に豆の栽培を担当して教えられている季敏さん
黒大豆、白大豆、千石黒大豆、小豆など様々な豆類を栽培され、黒枝豆は大手の生活日用品のブランドで取り扱いもされています。
有機の里づくり推進協議会や農業委員など、農業者の繋がりを大切にしながら、地域全体の農業に対して働きかける季敏さんは、生業として農業を成り立たせる人たちが増えていくための土壌づくりをされています。
有機JASの認定をサポートしたり、販路を広げたり、農家単独での力ではなかなか大変なことも、地域全体として農業を支援できる体制があればもっと発展するはずです。
自然や食の安全、人々の暮らしと共に、地域を支える農業のあり方を常に考え続け、実践されている季敏さんと丹波市の農業に大きな期待を寄せずにはいられません。
HOPE FARM
兵庫県丹波市春日町中山
TEL/FAX:0795-75-6636
https://hopefarm.jp/