創業から70年近く、美味しい卵を食卓に届け続けてきたカンナンファーム。

創業者でもある会長が、子供の頃に食べた卵の味が忘れられず、それを追い求め餌にこだわった卵「やまぶき」を途絶えさせないために。

奥さまの祖父にあたる会長からその想いや手法、これまでの会社の歴史を引き継いだ若き社長の新しい挑戦や苦労をお話いただきました。

 

美味しい卵を残すための事業承継

有限会社カンナンファームの3代目、山口洋史社長。奥さまが現在の会長の孫娘にあたります。

先代社長の急死により存続の岐路に立っていたカンナンファーム。

当時、運送会社にお勤めされていた山口さんは、お付き合いされていた奥さまからその話を聞きます。

実は、卵があまり得意ではなかった山口さん。カンナンファームの卵を初めて口にしたときに、こんなに臭みのない美味しい卵があるのかと衝撃を覚えました。

こんなにいいものをなくしたくない。そう感じた山口さんはお勤めしていた運送会社を退職し、承継することを決意します。

美味しい卵の追求。餌へのこだわり

カンナンファームの美味しい卵の秘密は、なんといっても餌へのこだわりです。

現在、92歳の会長が、子供時代を過ごした昭和初期の頃。

その時代は、獲れ過ぎた魚を田んぼに撒いたり、余った野菜は畑に捨てたり、そして辺りを鶏が放し飼いにされていたり、お金はなくともどこか豊かな心を感じる時代でした。

その頃に父親について卵拾いのお手伝いをしていた会長は、割れた卵を食べさせてもらったときのあの味が忘れられずに、大人になってから養鶏を始めます。

平飼い、放し飼い、様々な種類の鶏の飼育など、いろいろなことを試してみますが、なかなか子供の頃の衝撃の味には辿りつきません。

そんなあるときに、地元のニンニクを餌に混ぜて鶏に食べさせてみると、卵の味が変わります。

これは餌を変えるのがヒントだと気づき、餌を研究し始め、納得のいく味に辿りついたものが、現在販売されている丹波、奥里の卵「やまぶき」です。

 

要望から生まれた新規事業

こうして生まれた卵を真面目に販売し続け、カンナンファームの卵は、飲食店や製菓店など毎月200件を超える直販のお客様を抱えるほどの人気の卵として知られるようになります。

そんなカンナンファームの卵は、山口さんが承継してくれたことで、今も尚、たくさんの人の食卓に届けられています。

また、社長となられた山口さんはお客さまを周り、直接対話をすることで、世の中の人手不足から、卵を割る作業がとても大変なのだというニーズの声を拾い上げます。

新規事業として卵を割らなくても使える液卵の提供を決意し、準備を進めます。

するとその矢先にコロナ禍に。飲食店の先行きも見えず不安な中でしたが、決意を固め、機械化を進めたことにより、有名店から肉まんの繋ぎに使いたいというお声がかかるなど、新たな販路を広げています。

 

元々の信頼があったから、新しいことにも取り組めたのだと、どこまでも謙虚な山口さん。

物価高や卵不足による需要も高まり「ぜひ供給してほしい。」という切望する声を数多くいただいています。

必要としてくれるところに提供できることに、会社としての社会的な意義を深く感じられています。

 

約3万弱の羽数を養鶏しているカンナンファーム。鶏の入れ替えは5000羽ずつ行われます。

若い鶏が産んだ卵は大きさも小さく、また卵黄や卵白の量もまちまち。液卵の製造にも調整が必要です。

たくさんの鶏を飼育し、卵を生産、鶏糞の処理など、作業は多岐にわたり、13名の社員で全ての業務を行っていることにも驚きを隠せません。

鶏舎には機械が整備されており、卵の採取から製品のパッケージ化、鶏糞の処理まで全て自動化されています。

 

その機械が一旦止まってしまうと、鶏糞がどんどん溜まってしまったり、ものすごい数の卵の販売がストップしてしまう為、機械のメンテナンスは本当に大変です。

機械の故障については、会長に聞けば大抵のことは解決できるそうですが、以前に会長が腰を痛めて入院してしまったことがあり、その際にちょうど台風が襲ってきました。

屋根が飛びそうになるし、機械は止まるし、あの時に自分でなんとかできたことが成長につながったのかもしれませんと山口さんは笑います。

ずっと機械のメンテナンスを繰り返してきた経験から、整備がすぐにできるように、カンナンファームの鶏舎にはまるで設備屋さんのような装備が揃っています。

1日にたくさん排出される鶏糞は、発酵させて堆肥になります。

そのままだとものすごい臭いを放つ鶏糞ですが、発酵時の匂いを消す脱臭槽のお陰で、臭いは全然感じません。

環境にも配慮され、生成された堆肥は直接、袋詰めを行って近隣の農家さんや農協に販売されています。

地域にとってなくてはならない会社として、ますますの発展を続けるカンナンファーム。

山口さんは、今のスタイルを次に繋いでいくことが自分の役目なのかなと語ります。

世の中の傾向が良いものを食べたいという思考に変わってきていると感じられている山口さん。今現在の課題は、為替や飼料の輸入にも対応しながらどのように時代の変化に合わせていけるか。

付加価値の高い商品を生産量高く、環境にも配慮し、ニーズを拾う力もあり、非の打ちどころがないように感じるところですが、まだまだ上を目指して挑戦し続けるカンナンファームさんから今後も目が離せません。

 

有限会社カンナンファーム

丹波市春日町栢野17

0795-75-0933

https://www.kannan-farm.co.jp/